運転手さん



入社が決まった時、一番最初にお姉さんに教えられた事が「運ちゃんとか呼ぶんじゃないよ。運転手さんだからね。」でした。当然といえば当然なんですが、若かった私は「運ちゃん」が当たり前だったので丁寧な言葉に違和感を感じながらも、気をつけるように努めました。


◉お客さんが降りた後の車内

空車時には車内の清掃をしたり、次の日の準備をするのは以前に 「バスガイドの1日」〜ツアー開始から終わりまで〜編 でもお話しした通り。
広い北海道なので、時には運転手さんと2~3時間の長距離移動ドライブになる事も多々ありました。

そんな時なにをしていたか。
まぁ大体は雑談なんですが、ある時は車内のカセット(当時はまだカセット)を弄ってカラオケしてました!普段は案内をしているあのマイクで。想像つくと思いますがエコーとか効くわけでもないので非常に歌いにくいです笑 

そしてそんな時運転手さんは強制的に盛り上げ役です。
「おっ!いいねぇー!」とか
「これ古いべや!よく知ってんなぁ~!」とか。
運転しながら歓声をくれる。いやー、運転手さんも大変です笑

普段マイクを持って話しをしてるので、さすがに空車時まで喋ることはありませんでした。
そしてこんな事が許されたのはやはりローカルな地方の会社にいたからだと思います。
それがまたあったかくて居心地よかったんですけどね。


小樽から南下していく海岸線は奇岩が続くスポットです



◉お父さん

当時の道内観光で必ず立ち寄る場所、ドライブイン。トイレ休憩だったり買い物(お土産)タイムだったり。
バスが止まるとたくさんのお客様が寄るので、昔はドライブインの方からチップがいただけてました。(次もウチによってくださいね、的な)
ただ私が勤めていた途中から現金からコンビニなどで使えるクオカードになり、そのうちその風習自体がなくなったので、今はもう無いと思います。

観光バスが一台入るだけで40人弱の沢山のお客さんが寄るので、店員さんもお客様にお金を落としてもらうため呼び込みが一生懸命。一生懸命過ぎて運転手さんと一緒にいた私に「どう?これ!美味しいよー!お父さんに買ってもらいなよ!」っと。

ん?お父さん??制服も着ててバスから降りてきてるのになぜ?っと隣を見ると運転手さんも不思議顔。
まぁ調子に乗ってしばらくはその運転手さんの事を「パパー」って呼んでました。笑
もちろんその都度「お前のパパじゃないっ!笑」っと怒られてましたが。

各ドライブインには乗務員用の休憩室があります。
離島のドライブインで休憩してる時にお店の方がホタテ刺しやらウニやらを持ってきてくれて、札幌にいてもウニは苦手だったのにそこで食べれるように…!
観光バスの乗務員というのは道内各地で美味しいものが食べれるので口が肥え放題です!添乗員さんも仲間です笑。


日本海側はその昔鰊漁で栄えた所が多い


◉いい喋りしてるでねぇか

独り立ちしてしばらく経った頃、途中に寄った観光地で同じ会社の運転手さんと行き合いました。滅多に「偶然会う」なんてことはなかったので、会えるとめっちゃ嬉しい!なのでしばし雑談。

昨日までどこ行ってたとか、これからどこへ行くとか、交通状況などの情報交換したり。

ふとその運転手さんが言いました。
「お前、最近いい喋りしてるらしいじゃねぇか」(怖い言い方じゃないです。口がキツイだけです笑)

他の運転手Aさんと乗務した時の話を聞いたようで、どうやらAさんが褒めてくれていたらしい。
言われた時は多分文字通り顔が輝いたと思います。本当に嬉しかったので!

運転手さんはガイドの話をよく聞いています。そして他のガイドさんとのツアーももちろんあるので、新人の頃は「こないだここであの人はこうやって案内してたぞ」とか「あのテンポじゃ眠くなるなー」とか教えてくれました。基本みんな優しかったので勉強の為になるアドバイスを色々と。

一度ツアーに出ると、寝る時とお風呂・トイレ以外はほぼ一緒。独り立ちしてからは運転手さんとの2人のコンビなので、その運転手さんに褒められるというのは本当に嬉しかったのです。


「積丹ブルー」は思わず魅入ってしまう美しさです